田中正造記念館(館林市)中編

 

伝承施設

僕が知る限りですが、

田中正造と足尾鉱毒事件の伝承施設は、

栃木県と群馬県にまたがって、

合計3カ所あります。

一つは明治天皇への直訴状が展示された、

佐野市郷土博物館」、

二つ目が、田中正造旧宅(生家)、

三つ目が、ここ田中正造記念館です。

時間的な優先順位の都合で、

「佐野市郷土博物館」は

訪問していませんが、

全部巡ってしっかり体験すれば、

相当な田中正造通になれると思います(笑)

手作り年表

田中正造記念館の特筆すべき点は、

その多くが「手作り」である事です。

12枚のパネル展示で一通り、

鉱毒事件の流れを知った次は、

手作り年表で再確認します。

ここからは、

僕の独断と偏見で、

「気になるところ」を

抜粋しながら書き出してみます。

「明治12、3年ごろまでは

川幅いっぱいに網を貼りますと、

まるた(ウグイ)が百貫以上もとれました。

そのほかにコイ、マス、

スズキの成魚もとれ、

沼や川筋などにはナマズやフナ、

ドジョウ、ウナギなどがよろこんで

泳ぎ歩きました。

6月になりますと、

野や渡良瀬川の枝川には

ホタルがおびただしくおりました。

また渡良瀬川へはシャケが多く

のぼりまいったものでございます。」

のどかで平和な渡良瀬川の原風景が、

目に浮かぶような文章ですね・・・

■1868(明治元年)

「明治維新」

■1876(明治9年)

「古河市兵衛、滋賀直道、渋沢栄一らと

(足尾銅山の)再開発はじめる」

なんとあの渋沢栄一も

首を突っ込んでいたんですね(笑)

ちなみに滋賀直道は、

小説家、志賀直哉の祖父だそうです。

(Wikipedia調べ)

渡良瀬川の支流、多々良川に

そじょうしたサケの剥製。

このサケからのメッセージだったのか、

最近会社に行く前の昼飯は、

膝の痛み回復に効くという

「サケ」ばかり食べています(笑)

■1885(明治18)

削岩機を採用

足尾銅山近くの山林樹木、

前年春より枯れ始める。」

「魚類の大量死始まる

鉱毒被害が始まる」

「田中正造、足尾銅山を訪問」

■1889(明治22)

「煙害のため、松木村の養蚕全滅」

■1890(明治23)

「大洪水」

「鉱毒被害が激しくなった

(栃木、群馬両県1650町歩に及ぶ)

「渡良瀬川に魚族絶つ」

「田畑収穫ゼロ」

「足利郡吾妻村銅山採掘中止の上申書提出」

■1891(明治24)

「田中正造、第2議会

「足尾銅山鉱毒の儀につき

質問書」提出するが、

陸奥宗光農商務大臣答弁書

「被害の原因特定できず」として

政府責任回避」

■1893(明治26)

「紛鉱採集機設置」

■1894(明治27)

日清戦争

「田中正造 被害地調査(紛鉱採集機)」

■1895(明治28)

「永久示談進める」

「被害町村の多数で永久示談成立(3月)」

■1896(明治29)

「榎本武揚農商務大臣、

大臣としてはじめて被害地を視察」

「大洪水 7/21、8/17、9/8」

「鉱毒被害再燃、一府五県鉱毒被害」

「雲龍寺に鉱毒仮事務所を設置」

「田中正造 第9議会で

永久示談の不当性追求、

足尾銅山鉱業停止請願運動指導」」

■1897(明治30)

「内閣に

足尾銅山鉱毒事件調査委委員会設置」

「榎本武揚農商務大臣やめる」

「第一回大押出し3/2

第二回大押出し3/23」

■1898(明治31)

「沈殿池決壊」

「大洪水6/3」

「免租により、被害民は

公民権・選挙権を奪われる」

■1899(明治32)

「第三回大押出し9/26」

■1900(明治33)

「田中正造 被害地に

1064名の上京請願を要請2/3」

「川俣で憲兵・警察による大弾圧

(川俣事件2/13)」

「第四回大押出し2/13(川俣事件)

68名検挙され、51名起訴、

罪名 凶徒聚衆罪」

「田中正造

「亡国に至るを知らざれば之れ

即ち亡国の儀に月質問書」提出2/17」

「山縣有朋首相答弁2/21

「質問の趣旨要領を得ず。従って答弁せず」

「川俣事件一審判決(前橋地方裁判所)

有罪29名、無罪22名 12/22」

■1901(明治34)

「脱硫塔は全く機能せず、

松木村は「煙害救助請願書」を政府に提出。

「古河市兵衛夫人、古川タメ投身自殺」

「田中正造 衆議院議員辞職 10/23

幸徳秋水が直訴状をかく 11月

明治天皇に直訴 12/10」

ここに出てくる幸徳秋水は、

約10年後、

大逆事件(天皇に対する反逆)で、

処刑されていますが、

本当に天皇を亡き者にしようと

計画していたならば、

この時、

天皇に直訴して「頼る」ことに

協力したでしょうか・・・

直訴状の現代語訳。

■1902(明治35)

「古河が松木村を買収、村は消えて、

鉱滓捨て場となる」

「石川啄木ら、陸軍八甲田遭難事件

号外販売の売り上げを鉱毒事件被害民に

義援金として送る 1/29」

ここでは、

義援金を送った日付に注目です!

八甲田山での遭難が確定したのは、

1月27日、捜索隊が、

仮死状態の後藤房之助伍長を発見し

証言を得られた時ですが、

その2日後には義援金を送るという、

恐ろしいスピード感ですね!

石川啄木にこんな一面があった事、

啄木ファンの人には、

是非知って欲しいものです。

「女たちの押出し「被害地の老婆連」

(毎日新聞2/19)」

「第5回大押出し(五千余人)

平田農相に面会」

「川俣事件二審判決

三名を除き無罪判決。上告 3/15」

「大審院、やり直し裁判を

宮城控訴院(仙台)へ移送 5/12」

「川俣事件、宮城控訴院で、

書類不備で不成立(公訴不受理)

事実上無罪 12/25」

「田中正造

大審院あくび事件の上告棄却、

有罪確定 6/12」

「田中正造 巣鴨監獄で服役

6/16〜7/26

獄中で新約聖書を読む」

■1903(明治36)

「田中正造

静岡県掛川市で河井重蔵の選挙応援に

軍備全撤廃(無戦論)を演説。 2/10」

この演説は、日露戦争目前の

「ロシア叩くべし!」みたいな風潮に

抗ったのかも知れません・・・

■1904(明治37)

「日露戦争 2/10」

「帝国議会、災害土木補助費を可決

(谷中村買収を含む) 12/24」

■1905(明治38)

「田中正造

谷中村買収反対運動に取り組む」

「谷中村買収、

周辺や那須へ移住始まる 11月」

■1906(明治39)

「栃木県、谷中村第一、

第二小学校をかってに廃校 3月」

「田中正造

原田定助に財産処分一任、

9月、支援者、谷中村土地所有者となる

手続きを始める(一坪地主)」

■1907(明治40)

「内閣、谷中に土地収用法適用認定 公告」

「県、立ち退かなければ

強制執行と戒告 6/12」

「県、残留民16戸を

強制破壊(強制解体)6/26〜7/5」」

■1908(明治41)

「東京救済会から残留民に

恵下野(堤外)への暫定移住を

要請されるが残留民は同意」

■1909(明治42)

「四県に渡良瀬川改修

(河身変更、遊水池化)工事費の

負担を諮問 9月」

「改修案通過 9/23」

「田中正造 渡良瀬川改修工事に

反対する運動を展開」

■1910(明治43)

「桂総理、改修地域内に

土地収用法の適用を認める」

谷中村を廃村にして作られた渡良瀬遊水地。

「韓国併合 8月」

「田中正造 四県の水害を見舞い、

渡良瀬、利根、鬼怒川、思川などの

関係河川を調査」

「関宿周辺図」(田中正造筆)

半年で1800Kmも歩き、

調査したそうです。

■1911(明治44)

「大逆事件、

幸徳秋水ら12人死刑 1/18」

「栃木団体(谷中村民をふくむ)、

サロマベツ原野に移住 4/7」

■1912(明治45 大正元年)

「明治天皇死去 7/30」

「足尾鉄道全線開通 12月」

■1913(大正2)

「大正天皇、皇后、

精銅所行幸啓 9/6

社長古河虎之助ら迎える」

「田中正造の寄付を受け、

小中農教俱楽部結成」

「田中正造 断食を決心 7/6」

「田中正造 資金調達のため、

行脚中、栃木県足利郡吾妻村下羽田、

庭田清四郎方に倒れ込み、臥床。 8/2」

「9/4 胃ガンのため死去。

遺骨は6カ所に分骨。」

田中正造終焉の地。

■1914(大正3)

「第一次世界大戦始まる」

「足尾鉱業所での国産の削岩機成功」

「旧谷中村残留民、

田中霊祠を安置したと罰金刑 3月」

■1916(大正5)

「銅山、最好況時、産銅量

1万5千トン、人口3万8428人」

「栃木県、残留民に立ち退き命令を出すが、

残留民応じず 11月」

■1917(大正6)

「県が強制執行の動きを見せ、

残留民は移転を承知する 2月」

ジオラマ

記念館の庭には、

足尾銅山と鉱毒事件の舞台が、

ジオラマとして設られています。

このアイディアと手作り感に、

心から拍手ですよ!

「自分のリソースを信じろ!」

楠木正成のこの名言を思い出します。

足尾銅山。

渡良瀬川や

川俣事件の現場、

田中正造記念館、

田中正造の仮葬儀が行われた

雲龍寺も見えていますね!

ジオラマに感動した後は、

企画展コーナーへと移動します。

(続く)

 

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