田中正造記念館(館林市)後編

 

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田中正造記念館のパネル展示は、

懇切丁寧で説明書きも膨大で、

見逃せないものばかり・・・

これは有難いし、

とても嬉しいのですが、

ブログに書き出す時に、

自分が撮った写真だけでは、

文章を確認できない場合も多く、

ちょっと困っていたら、

企画展の「女押出し」で

展示されていたものが、

そのまま全てPDFとして、

公開されているのですよ!

いや〜これには感動でした。

どこまで親切なんでしょう、

田中正造記念館さん!

額縁

常設展示の部屋から、

企画展示の部屋へ。

パネル展示にもあった、

田中正造さんの言葉が、

額縁に納まっています。

「真ノ文明ハ

山ヲ荒ラサズ

川ヲ荒ラサズ

村ヲ破ラズ

人ヲ殺サザルベシ」

文明というものを究極的に考えた時、

やはりこの視点しか

ないのでしょう・・・

「女押出しと支援する人々」

足尾鉱毒事件で頻繁に出てくる

「押出し」という言葉、

「地方から大挙して東京へ請願に行く」

このような意味で使われています。

生まれてこの方、

相撲の決まり手以外には、

「押出し」を知りませんでしたが、

日本語は難しいとはいうものの、

色んな解釈があって、

何かと便利でもあるようです(笑)

そんな「押出し」(請願)の中でも

「女押出し」と呼ばれる

女性が中心となった押出しの

企画展に僕たちが遭遇したのは、

令和7年10月21日。

奇しくも高市早苗氏が、

女性初の内閣総理大臣となった

記念すべきその日だったのです!

パンフレット。

ここからはパネル展示の

気になるフレーズを

抜粋して書き出します。

■はじめに

「明治35年2月下旬から4月下旬までの

二ヶ月間に、70代から20代、

3歳の乳飲み子をかかえた女性まで、

のべ70名の女性たちが、

鉱業停止を求めて、

東京の街をかけめぐりました。

30回以上にも及ぶ

女性たちの請願活動(女押出し)は、

東京在住の学生、宗教家、宗教団体、

政治家、労働者、市民と

多くの人たちの救援、義捐を受け、

その支援は、日本全国・外国まで

広がりを見せていきました。

3月末には、女性たちで東京に家を借り、

自分たちの活動拠点をつくり、

精力的に行動するように

なっていきました。」

■女押出しの女性たち

「★3名 貧苦、旅費一文もなく、

3日の旅路を無銭で歩行、

寒い夜を愛宕山で野宿」

これには参りました・・・

ここまでしても請願するという

心意気というか使命感というか、

もはや言葉がありません。

■東京のどこへどんな女押出しをしたのか

「明治三十五年二月二十二日

近衛公 婦人隊の総代を引見す」

「栃木県鉱毒地方の老婆数十名、

余に面会を求む。

総代数人を議長面接室に呼び入れて面会す。

ただ泣くのみにして

さらに要領を得ず、慰撫して帰らしむ。

(近衛篤麿日記より)」

Wikipediaによれば、

近衛篤麿さんは、

第二次大戦後自殺した

近衛文麿首相のお父様で、

この面会後、2年ほどで

病気で亡くなっています・・・

大東京図。

ここに請願に行った先が記してありますが、

まだ東京駅はなく、

その多くは徒歩での移動だったと思われます。

女性たちの活動の原動力は、

「一日も早い鉱山停止」

これに尽きるでしょう。

■第6回大押出しと女性たち

地元から東京への広域図と

東京での活動図とで、

詳しく案内されています。

「3/9昼 新郷村伊賀袋被害民7名出発

鷲宮→夜道→上野で警官に見つかり、

5日夕方、下谷警察署へ連れていかれ

5日夜、警官に護送され、帰村させられた。

全く罪人あつかい、

寝具も弁当も出さなかった。」

面会に成功した人の裏には、

こうして志を遂げられず、

帰村した人も多くいたようです。

ただ、この方々がいたからこそ、

東京、ひいては全国の人々の

心を動かしたのは、

間違いないでしょう。

■支援する人々

多くの人、団体、企業が

バックアップしています。

■(無題)

「悲命死者供養の和讃」

「帰命頂礼諸人よ、我等の受くる苦しみは、

地獄の責めをこの世から、

遠く足尾を見渡せば、

悪鬼羅刹の数多すみ、廻る車輪の音凄く、

毒の煙は山に満ち、青き物とて更になし、

流るる毒は絶え間なく、

はたとせ余りこの方は、

田畑に更に稔りなく、

次第に細るなりわいに、

見渡す限りの村々は、皆餓鬼道の苦しみぞ、

思い廻せばそのむかし、我等の父母のいます時、

渡良瀬川辺の賑わいは、

極楽浄土もかくばかり、

諸行無常と聞くものの、

その楽しみは夢とさめ、寄る年波と共どもに、

かなしき数の限りなく、

毒の利き目の恐ろしき、

乳の乏しきそのために漸く生まれし初孫も、

遠きあの世の人となる、

地蔵菩薩も見捨てたか、

数多の子どもは殺されて、

生き存(ながら)える子ども等も、

見るも憐れのその相(さがら)

救い給えや諸人よ、我等の受くる苦しみは、

前世の因果は兎にもかく、

此の世に生まれ出しより、

君の御恩は片時も、忘るるひまはなきものを、

朝な夕なに御佛へ、

回向供養も怠らず、父と母の其のなさけ、

世間に尽くす義理あいも、

五戒十膳身を守り、行うもののなさけなや、

足尾に住める鬼どもの、

日毎に流す毒水に、我が同胞は無惨にも、

多くの非命に覆さるる、死に残りたる我々は、

倒れし孫や子供等の、

頓證菩提のその為に、慈悲ある人の力かり、

明日にも倒るる嫁や子の、

施療の為に村々を廻り廻りて

浄財の供養を願いたてまつる

助け給へや もろ人よ、

慈(なさけ)は人の為ならず、

三世諸佛の御経にも、

布施する人は次の世に天上界に生るると

説き遺されし有り難さ。」

これを歌いながら街を練り歩き、

人々の共感を誘ったのです。

クラウドファンディングの先駆けというか、

今も昔も「発信力」というのは、

念願成就の大きな鍵ですからね!

このやり方は、

大いに成功したようで、

肉屋、パン屋、その他

多くの人々からの

バックアップを獲得しています。

幕末の「いろは丸事件」の時に

坂本龍馬が長崎において、

(ぶつかった相手の)「紀州藩こそ悪者だ」

という流行歌を作り

その歌の効力で「世間が味方」となり

龍馬の主張が通りやすくなった

というものにも少し通じるお話ですね。

■女押出しを支えた人々の力鉱毒救済幻燈会

「鉱毒被害地の惨状を

幻燈(スライド)を使いながら知らせ、

救援・支援を求める活動が

各地で行われました。

キリスト教、仏教に限らず、

しゃも鍋屋、音楽会など。

その度に義捐金も集まりました。

もちろん物資も。」

ビックリですね!

明治時代にスライドで告知なんて。

現代ならば、

YouTubeやSNS戦略みたいなもので、

先ほどのクラファンと同じく(笑)

時代の最先端を行っていたのでしょう。

■女押出しを支えた人々の力

義援・義捐金募集運動

関東を中心に全国から義援金が

集まっていて、

総額は今の価値に換算すると

2千万円ほどだと記されています。

■正造さんは女押出しをどう見ていたのか

ここでは女性たちの「声」が

印象に残っています。

「誰がこのような有様にしやんしたか、

一人の人が毒を流すので私どもはみんな

この様な苦しみを受けるのでやんす。

それだのに大臣さんも、

その山を停めない、

政府も一人をかわいがって

毒を流させておくから、

取りも直さず、人殺しでやんす。

いつ人殺しを止めてくれるかどうか、

大臣さんにようく聞いておくんなし」

これは全くの正論です。

とにかく

鉱毒事件の記述は、

言葉にならないことばかりです・・・

■押出しから現代を考える

ここでは繰り返す人間の所業が

紹介されています(汗)

きっと地球に人類がいる限り、

これは無くなりませんよ・・・

それが人の性なんですから・・

だからこそ、

常に意識して行動する事が大切!

そう思っています。

妻が展示パネルに隠れていた「書」を発見。

どちらも人宛に書いた文字のようです。

こちらも人宛、

自分のことよりも

ひたすら他人を思い行動し、

最後は全財産を寄付した

田中正造らしい作品ですね。

こちらは田中正造生家前のお墓に

刻んである絵と書です。

田中正造記念館に行った後に

僕たちはお墓に参り、

実物も拝見しています。

こちらは正造語録を

どなたかが謹書されたもののようです。

田中正造すごろく

田中正造記念館の特徴は、

展示の多くが手作りという所ですが、

中でも

窓枠に張り出された「すごろく」は、

実に良く考えられています。

これで遊ぶだけで、

田中正造の軌跡と

足尾鉱毒事件の全てが、

インプット出来る(多分)のですから!

重たい話を軽いノリで広めるのも、

「伝承」していく一つのやり方でしょう。

田中正造記念館の秀逸なアイディア、

素晴らしいと思います。

エピローグ

最後に買った物がこちらです。

田中正造さんが

自身が一番気に入っているという

写真の缶バッチ!

現在、妻のリュックには、

常に田中正造さんがいらっしゃいます(笑)

最後は門前にてツーショット。

これにて田中正造記念館の拝観は、

全て完了です。

 

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