天寧寺・萱野権兵衛の墓(後編)
昨日の出来事・・
戊辰戦争での旧幕府側の戦死者、
刑死者を慰霊する場に行くと、
常に感じるのが、
明治政府への気遣いです。
朝敵の汚名を着せられて、
何としても復権したい気持ちが、
大きかったのでしょうか・・・
敗戦の一切の責任を負い刑死した
萱野権兵衛の墓石近くにも、
ちゃんとした「表示」はなく、
今でも何かしらの
憚りを感じてしまいます・・。
はるか150年以上前の出来事も
人類悠久の歴史から俯瞰すれば、
ほんの昨日の出来事・・・
戊辰戦争はまだすぐそこなんですね。
田中家墓所
豊津南高梅から少し行くと
「近藤勇之墓」の案内があります。
左に行けば近藤さんですが、
それはまた後で・・
と思いつつ、左を見ると
家老田中家の墓なるものを発見。
田中家の家紋は、
輪違の片方が四角形。
家紋の名称は・・分かりません。
案内には、
「初代の田中三郎兵衛正玄は、
保科正之公とともに
山形から会津に移った。
保科正之を祀る土津神社の、
公を護る七名の末社の一つ
「信彦霊社」として祀られている。
この墓所には、
二代〜八代までが埋葬されている。」
このようにあります。
へ〜土津神社のあの末社か!
とびっくり(笑)
こちらが、はからずも昨年(令和五年)
土津神社参拝時に遥拝していた、
「信彦霊社」(右から二番目)で、
ご縁というもの不思議ですね。
田中さん一族の墓へ。
二代〜八代にお参り。
田中さんの墓からの眺望、
結構いい感じ!
郡長正の墓
さらに山の中へ。
何か墓石が見えて来ました。
観世音菩薩像と案内碑。
「萱野家の始祖は、
萱野権兵衛長則と称し、
加藤嘉明の家臣で、
加藤家転封後も会津に残り、
保科正之に召し抱えられた。
戊辰戦争の責任を負って切腹した
家老、萱野権兵衛長修の息子、
郡長正は、会津復興教学の為、
豊津藩(小笠原藩)の育徳館に留学したが、
とある事情により、明治四年五月一日、
会津の武士道を汚したとして自刃。
小笠原藩では、会津に向けて墓石を建てて、
その霊を弔った。」
このような内容が記されています。
加藤家はお家騒動の結果、
40万石から1万石への
大減封だったことで、
有能な萱野さんは、
保科さんに拾われたのでしょう。
観世音菩薩横に位置する
郡長正の墓に参拝。
会津から僕たちの住む福岡県まで、
はるばる勉学の為に来て、
そこで切腹した長正さんには、
福岡県民として申し訳ない気持ちが、
出てしまいます・・・
背面の命日の日付は、
五月一日ではなく五月十八日。
Wikipediaによると
「命日は豊津の墓には
五月朔日と刻まれており、
それが遺族に伝えられた段階で
5月18日になっている。」
このように書かれています。
父の権兵衛さんの命日が5月18日なので、
その数字が先走りしたのかも
知れませんが、今となっては、
それも父子のご縁という事で
いいでしょう。
萱野権兵衛の墓
次の権兵衛さんの墓は、
迷いまくりました・・・
冒頭に書いた、
「憚り」のためか、
明確な表示が無いのですから・・
この一角に見当たらないようなので、
さらに先の方へ降りて、
墓石の名前を調べるも
違うものばかり・・
再び、郡長正の墓近くに戻り、
ようやく妻が、
「これじゃないの?」と
示したのが、こちらです。
近づくと・・
夫婦の戒名が刻まれています。
「報国院殿公道了忠居士」
間違いなく、
萱野権兵衛長修の戒名ですね!
そして、参拝。
左側面には奥様の命日が、
こちら右側面には、
権兵衛さんの命日、
明治二年五月十八日が刻まれています。
墓裏。
「一瀬氏女萱野長修妻之墓」
これのみが書かれています。
これも明治政府への配慮で、
萱野権兵衛長修の名を
伏せたのでしょう・・
萱野家祖先の墓
迷った時に参拝したのが、
萱野家祖先の墓です。
権兵衛さんの墓から奥に降ると
お墓スペースが開けています。
参拝。
会津士魂の碑
権兵衛さんと長正さんの墓参りを終え、
近藤勇の墓との分岐点に戻った時、
行きがけには気づかなかった、
「会津士魂」という立派な石碑を発見し
行ってみることに。
V字路を右に入ったところに
目指す石碑が見えています。
まずは、石碑の文字を書いた
早乙女貢のお墓へ。
墓誌には、
「大正十五年一月一日
ハルピン生まれの直木賞作家。
曾祖父は会津藩士。
平成元年、十八年間書き続けた
「會津士魂」(全十三巻)により、
吉川英治文学賞を受賞。
さらに平成十三年
「続會津士魂」(全八巻)を刊行。
三十一年間にわたる連載が、
ここに完結した。
會津藩士四代目を自任し、
会津の山河と城下を心の故郷として
生涯愛し続けた。」
このように刻まれています。
お墓に参拝。
会津士魂碑は、萱野権兵衛さん達の
お墓に向かって建てられています。
主君を庇い従容として死んでいった
会津士魂そのものの権兵衛さん、
碑の向こう側から
微笑まれている事でしょう・・
(続く)