松江城(島根県松江市)後編
国宝と重要文化財
松江城の前編でも少し書きましたが、
現在の松江城は、
国宝に指定されていますが、
それまでは、昭和25年以来、
平成27年まで、65年間もの間、
ずっと重要文化財でした。
ただ松江城、昭和25年以前は、
「国宝」だったのです…
と言っても戦前の基準ですが。
昭和4年制定の「国宝保存法」において、
「国宝」だった建物は、
昭和25年制定の「文化財保護法」では、
旧国宝は全て一旦、重要文化財とされ、
その中でも特に重要なものを改めて
「国宝」に指定しました。
なので、旧国宝保存法の下に
国宝だった建物は、
重要文化財に格下げされたのではなく
指定されている価値は変わらなく、
新たに制定された「より価値の高いもの」
である「新しく制定された国宝の基準」に
満たなかっただけなのです。
しかし、人間は、聞いただけで
物事の価値を判断しますから、
法律の基準云々などはそっちのけで、
国宝だったのが、重要文化財に
「格下げ」になったのか…
くらいにしか思いません(汗)
だからこそ松江市民は、一丸となって
「格下げ」から何とか、
国宝復帰をと涙ぐましい
努力をして来たのです。
ただ、国宝に指定されるには、
かなり厳しい基準があり、
松江市が文化庁に陳情に行ったときに
言われた事の一つが、
「お城の築城年が証明出来るものを
見つけてください」でした…
65年も探してなかったものが
新たに見つかるのか?
そう思ったかも知れませんが、
松江市民はあきらめませんでした!
その証明出来るものを
血眼になって探したのです。
そして、懸賞金500万円という金額が
功を奏したのか(笑)、
遂にお城の築城年を証明出来る
「祈祷札」が二枚、
松江城の二の丸上の段に鎮座する
松江神社で見つかりました。
これがきっかけて、松江城は
65年ぶりに「国宝」と
名乗る事が出来るようになったのです。
やはり国宝効果は大きく、
松江城を訪れる観光客は、
5割ほど大幅にアップしました。
たった500万円の投資で、
(他にも諸経費はあるでしょうが)
莫大な観光収入が増えた松江市、
素晴らしいではありませんか。
まるで「プロジェクトX」の世界ですよ!
やはり地元にある「もの」や「こと」の
価値を地元の人々が知り、大切にして、
それをしっかりと外部に伝えて
それが観光資源になるというのが、
正当な「観光客誘致」だと思います。
箱ものを作って、さあ、来てください!
入場料払ってください、
インスタ映えするもの沢山ですよ〜!
なんていうのは、あっという間に
無用の長物になってしまいますから…
そんな国宝指定の決めてとなった
祈祷札(レプリカ)が松江城内には
あるそうで、それを見るのも
一つの楽しみとして登城しました。
天守内へ
松江城の無骨な外観に魅せられて、
何枚写真を撮ったのかわかりません(笑)
そして、いよいよ内部へと入ります。
400年前からある登城口から
入るなんて、武士になった気分ですね!
ここは鉄の扉になっていて、
正に鉄壁の守りです。
400年前からある鉄扉。
郵便物を入れられそうな穴?
もありますね(笑)
そして、いきなりの祈祷札です!
天守に井戸があるのは
かなり希少です。
こちらが松江神社で見つかった
祈祷札のひとつ。
慶長16年(1611)1月となっています。
こちらが二枚目の祈祷札。
こちらも慶長16年としっかり
明記されています。
松江市民の執念が
見つけ出した祈祷札の案内に
ちょっとジーンと来た僕です(笑)
以前の鯱もあります。
石を投げて迎撃する場所。
そして、一階へ。
長さ二階分の柱を沢山もうけて、
天守の荷重を支える技法が、
姫路城の地下から上までの
長大な柱で支える技法との比較で
案内されているのは、
とても分かり易いですね。
要衝である姫路城には、
莫大なお金が使え(使わせられた?)、
長大な柱も調達出来たでしょう。
それに比べると、
松江城の予算は少なかったはず…
その予算の中で最高のものを作った
人々の凄さを感じます。
何も展示品がないのが、
今回のラッキーです!
この築城当時のままって
凄いことですよね!
階段は梯子に近い勾配で、
この雰囲気を味わえるのは、
現存天守ならではのもの。
バリアフリーとは正反対ですが、
足元があぼつかない年配の方々も
ゆっくり、ゆっくりと
登り降りされていました。
唯一、置いてあったもの。太鼓と像。
松江城にあったものを
明治の廃城時に有志が買い取り、
阿羅波比神社(あらわいじんじゃ)に
奉納したものです。
それがまた松江城に戻った(展示)
とは、この太鼓、よっぽど松江城に
愛されていますね!
この木の質感がまた素晴らしい。
アール状の加工。
通し柱の案内。
ここだけが通し柱を確認出来る場所。
隠し部屋?物置?
そして、最上階へ。
西側。
宍道湖方面(南側)
江戸時代は宍道湖も
大きな外堀の役目を
果たしていたのでしょう。
天守前の広場と一ノ門。
瓦の流れ方がカッコいい!
東側。
最上階の内部。
何かに見入っている妻の姿も(笑)
各所の石垣の高さが記してあります。
敵には絶対に渡せない図面ですね!
そして、こちらが国宝の証。
燦然と輝く「国宝指定書」も
この天守最上階にあります。
これは本物なのでしょうか…
こんな場所に置いていて
本当に大丈夫なのかな?(笑)
今日の癒し
天守最上階から見た森の景色。
鷺(さぎ)ちゃんだらけです〜(笑)